2026年9月、「プロテインが値上がりしている、背景に痩せ薬?」という話題がニュースになりました。ジムに通うトレーニーの間では「もう鶏むね肉の方が安い」という声も上がっているようです。実際に何が起きているのか、バルクラボの視点で数字を整理してみます。
原料価格は本当に「異常」な上がり方をしている
プロテインパウダーの主原料であるホエイ(WPC80)の欧州卸値は、2023年5月の1トンあたり5,100〜5,400ユーロ(約91万〜96万円)から、2026年1月には14,320ユーロ(約255万円)まで上昇しました。約2年半で2.8倍というのは、この市場では過去に例のない上がり方だとされています。
背景には主要生産国であるニュージーランドの酪農生産が、乳牛飼育頭数の減少などにより伸び悩んでいる事情があります。
「痩せ薬」がプロテイン需要を押し上げているという構図
ニュース記事のタイトルにもなっている「痩せ薬」との関係も、単なる憶測ではなく一定の裏付けがあります。
マンジャロなどのGLP-1薬は米国で急速に普及しており、Gallup社の2025年10月の調査では米国成人の12.4%が使用していると報告されました。2024年2月の5.8%から、わずか1年半ほどで2倍以上に増えた計算です。
GLP-1薬による減量では、体重減少の20〜40%が筋肉や骨などの除脂肪組織由来だとされ、医療機関では通常より高めの体重1kgあたり1.2〜1.6gという摂取量が案内されています。
バルクラボのプロテイン摂取量計算で使っている一般的な運動習慣者向けの係数(1.4g/kg)とほぼ同水準か、それ以上です。つまりGLP-1薬の利用者は「減量中なのに、通常のトレーニーと同じかそれ以上にタンパク質を必要としている」ことになり、この層の急拡大がプロテイン需要を底上げしているというわけです。
鶏むね肉とプロテインパウダー、タンパク質1gあたりの実際のコストは?
ここからはニュース記事にはない、バルクラボ独自の試算です。「鶏むね肉のほうが安い」という声は、数字で見ても概ね正しいと言えそうです。
- ホエイプロテインパウダー: 1kgあたりの相場は概ね3,000〜5,000円、タンパク質含有率は製品によりおよそ75〜80%程度です。仮に1kgあたり4,000円・含有率78%とすると、タンパク質1gあたり約5.1円になります。
- 鶏むね肉: スーパーでの相場は100gあたり概ね78〜121円、可食部のタンパク質含有量は100gあたり約23gです。仮に100gあたり100円とすると、タンパク質1gあたり約4.3円になります。
店舗やタイミングで前提の価格は変わりますが、この目安で見る限り、鶏むね肉のほうがタンパク質1gあたりのコストはやや安いか、少なくとも大きくは変わらない水準です。
一方でプロテインパウダーには「調理不要」「持ち運びやすい」「トレーニング直後にすぐ摂れる」という利点があるため、単純にどちらが優れているという話ではありません。
まとめ: 値上げが不安なら、まず「自分の本当の必要量」を把握する
プロテインの値上げは今後も当面続く可能性が高いとされています(本格的な供給緩和は2027年以降の新設備稼働を待つ必要があるとの分析もあります)。
値上げに一喜一憂するより、まず自分に必要なタンパク質量を具体的なグラム数で把握し、その一部を鶏むね肉や卵、大豆製品などの食品に置き換えることで、家計への影響を抑えながら必要量を満たせます。必要量の目安はプロテイン摂取量計算、体脂肪率が高めの方は除脂肪体重ベースのタンパク質摂取量計算で確認できます。GLP-1薬を使用中の方は、通常よりやや高めの係数を目安にすると良いでしょう。